君が獣になる前にネタバレ61話
その頃警察署にて、非番の柳が出勤していた。一方の神崎家では琴音が仏壇を綺麗に掃除して、あの事故の日、大好きだった神崎の両親が向こう側に見えたので走り出した、そして事故が起こってしまったことを話して声を震わせて謝罪をした。神崎に対する謝意だけでなく、反省、後悔を口にしていると、背後から物音がしたので思わず振り返ると・・・
黒スーツを着てマスクで顔を隠した人物がスタンガンを構えて立っていた。
一方神崎はことねに謝るために墓場から急いで帰路についていた。転びそうになりながらも進む神崎だったが、すれ違うように琴音が乗せられたワンボックスが反対方向へスピードを上げていた。
琴音も車内で目を覚まし、両手を縛られていることから誘拐されたことを把握したが、この状態のままならば何も起こらないとある種の安心を感じていた。しかし運転手兼誘拐犯が話しかけてきた。
「こんな世界、壊れてしまうべきだ」
そして琴音もその言葉に同調した・・・
君が獣になる前に考察
神崎の心情
神崎の心情はカンナが話していたとおりですが、両親を亡くしたショックを受け入れきれず、無理やりその理由を作ることで悲しみを忘れようとしていたのだと思います。宮ノ森の言う通り”不幸な事故”だったのだと思いますが、当事者からしたらそんな程度で済ませられるわけはないですし、だからこそ明確な理由が必要だったわけです。
もしかしたらそれは何でも良かったのかもしれません。
カンナの母があの時あの場所で車を走らせていたことでもなんでもよかったのかもしれませんが、数ある”理由”の中から「琴音が神崎の両親に声をかけて走り出したこと」を理由に選んだのです。もしかしたら幼馴染ゆえに一番責めやすい対象を無意識に選んだのかもしれませんが、琴音のせいにして憎しむことで両親の死を忘れようとしていたのかな〜と思います。
幸い私の両親は元気なので神崎の気持ちはわかりませんが、何かしら依代というかすがるものが必要なんだと思います。そしてそれはポジティブなものでなくともネガティブな感情でもなんでもよくて、ただ悲しみを忘れるために琴音への憎しみを無意識に選んでしまったんだと思うと、悲しいですね・・・
琴音の心情
一方の琴音ももちろん神崎のその感情を理解しています。
それに自分が事故の原因になっていることももちろん理解しているので、神崎に責められても仕方がないと考えていたからこそ今回墓参りには行けなかったのでしょう。「大事な人の両親を殺しておいて自分だけ生きている」ことに罪悪感を感じており、それでも幼馴染の神崎の側にいるのはどのような気持ちだったんでしょうか。
琴音はデフォで笑顔の少女ですし、軽口が多くて天然な感じのする少女ですが、内面はかなり深い傷を抱えています。それをカンナは”呪い”と形容しており、かつて四十九日の日、花を持ってきた琴音に対して神崎が「こんなことで許されると思うなよ」と言ったことで琴音が世界を壊してしまいたくなった直接の原因になったと考えられます。
しかし神崎はその呪いを解く方法を理解し、今すぐにでも呪いを解くべく琴音のもとに走りますが、琴音はそのタイミングで誘拐されてしまいました笑。ハッピーエンドに向かいつつあったのに、このタイミングで誘拐するやつは空気読めませんね(笑)
カンナの心情
カンナも被害者の一人です。
結局のところ、カンナの母が神崎の両親を轢き殺してしまったのは琴音があの時飛び出したから、です。だから琴音を恨むのは最もだと思いますが、本人も語っているように、カンナの前に現れた琴音は幸せそうには見えなかったのです。母の人生をぶち壊して幸せそうにしているのであれば容赦なく鉄拳制裁ですが、そうではなかったために同情してしまった、と話していました。
そして琴音の話を聞いて、世界を壊す手伝いをしていくことになったわけです。母を殺した人物として琴音を選んだ点ではカンナも神崎と同じだと思います。確かに琴音が事故の原因になっていることは間違いありませんが、そもそもあの場所に神崎の両親が通りがからなかったら、カンナの母があの場所で運転していなければ・・・
この辺の理由を深ぼっていくと最終的には車が存在しなければ、それを作った人類が存在しなければ、人類を育んだ地球が誕生しなければ・・・と哲学的な話になってしまいます。だから自分の目の前にいて直接責めたてることのできる希堂琴音をその対象に選んだのです。このあたりは神崎と同じだと思います。
ただこれはあくまで客観的な視点であり、私の両親が事故に遭ったとしたら琴音を恨むのかもしれないですね。すべてマンガのフィクションですから、それに対する単なる私の感想なので便所の落書き程度のものですね(笑)
58話 ⇔ 62話