漫画「変な絵」は、ホラー小説「変な絵」のコミカライズです。雨穴(うけつ)氏の人気作「変な家」の後続作で、独特な謎解きと不気味な雰囲気が魅力のミステリーです。この物語では「絵」をテーマにした不気味なエピソードが複数描かれ、それらが最終的に一つの真相に結びついていきます。
吉永
感想を一言で言うと、「絵を見るのが怖くなる話なのに、読後も絵を見たくなる」、そんな奇妙な感覚が残る作品でした。
目次
おすすめポイント
・まず、タイトルが勝ち
「変な絵」なんてタイトル、ズルいですよね。だって、誰だってどんな絵か気になるじゃないですか。「変」ってどれくらい変なの? ピカソみたいに芸術的な変さ? それとも子供が描いた落書き的な変さ? ……でも実際は、そのどちらでもなく、「ただただじわじわ不安になる変さ」 なんです。
・ストーリー展開の面白さ
ストーリーの進行は、じわじわと謎が深まるタイプ。最初は「奇妙な絵」の存在だけが提示されるんですが、読み進めるうちに「ただの絵じゃない」という違和感が増してきます。そして、主人公が絵の謎を追うほど、「自分だったら絶対こんな絵見たくない!」と思うのに、物語に引き込まれてしまう。
なんというか、「自分も絵に呪われていく感覚」が味わえるんですよね。ページをめくるたびに、どこかで「その絵が見えるんじゃないか」と怖くなる。でも、読んじゃう。これ、ある意味呪いですよね?
・絵の怖さがリアルすぎる
この作品のすごいところは、絵そのものを細かく描写していないのに、読者の頭の中で「変な絵」が勝手に形作られていくところ。「人間の心理を狂わせる絵」なんて大げさだと思うでしょ? でも、「ちょっとおかしい風景画」とか「どこか不自然な遠近法」なんて説明されるだけで、もう頭の中に勝手に怖い絵が完成するんですよ。
しかも、最終的にはその絵に隠された犯罪の謎や、絵が人を狂わせる理由まで明らかになるから、「怖いだけじゃなくて知的好奇心も満たされる」というお得感!
・ラストが忘れられない
物語が一応の終結を迎えたあと、「絵の呪いはまだ続いている」という余韻を残して終わるのも最高でした。焼却されたはずの絵の欠片がまた新たな呪いの種になる……これ、完全にホラー映画の「次回作への伏線」じゃないですか! 読み終わった後に、「これ、本当にフィクションだよね?」って部屋中の絵を確認したくなりました。
総評
『変な絵』は、一見すると静かなホラーですが、その奥には「人間の心理の弱さ」や「過去の清算」のテーマが隠されています。そして何より、読み進めるうちに自分の頭の中で怖さが増幅していく仕組みが見事!
読後の感覚を例えるなら、「知らないはずの絵が夢に出てきそうな気がする」って感じです。本当に怖いのは、絵そのものじゃなくて、「怖いと思わせる自分の心」なのかもしれません。
以下で、内容をネタバレで解説します。
プロローグ
絵に秘められた心理的な背景や解釈が物語の伏線として提示されます。ここで焦点となるのは、主人公直美が描いた「文鳥を守る樹の絵」。
直美は幼少期に虐待を受けており、大事にしていた文鳥を守るために母親を殺してしまった過去を持っています。この事件が直美の心理に深く影響を与え、絵にもそのトラウマが反映されているのです。
心理学者萩尾登美子は、この絵を分析し、直美には「更生の余地がある」と判断します。しかし、この判断が軽率だったのではないかという議論が作中でも展開されます。
この絵に対する解釈がその後の物語の展開に重要な役割を果たし、直美の行動や物語の真相に迫るキーとなります。
プロローグでは、絵がただの美術作品ではなく、登場人物の内面や過去を映し出すツールとして機能している点が特筆されます。この絵を巡る謎と心理学的解釈が、読者を物語の深層へと引き込む重要な仕掛けとなっています。
第1章:ユキが描いた5枚の絵の謎とは?
主人公のユキが描く5枚の絵が物語の鍵となっています。この絵は一見すると無関係に見えるが、実は一連の事件やユキの過去、そして彼女の抱える心の闇と密接に繋がっています。
ユキは心理学者の指導のもと、セラピーの一環として絵を描きます。これらの絵には、彼女が意識していない潜在意識の断片が表現されています。
特に、描かれた風景や人物が物語の進展に伴って次第に意味を持ち始め、恐ろしい真相が浮かび上がってきます。ユキが絵を描き進める中で、彼女自身の過去や、家族に隠された秘密が徐々に明らかになっていくのです。
この章では、絵の描写や心理学的な分析を通じて、不気味な雰囲気が巧妙に作られています。物語の伏線が張り巡らされており、ユキの絵が単なる絵以上の存在であることが示唆されています。
ユキが描く5枚の絵は、物語の中心的な謎を形成しています。それぞれの絵は、単独では理解しにくい抽象的な要素を含みますが、全体を通して見たときに恐ろしい真相が明らかになります。
5枚の絵の内容とその意味
・最初の絵
平和な風景画のように見えますが、よく見ると奇妙な形や配置のオブジェクトが含まれています。この絵にはユキの無意識に潜む恐怖や罪悪感が表れており、後に具体的な事象と結びついていきます。
・2枚目の絵
人物が登場する絵ですが、その配置や視線に違和感があります。ここにはユキが抱えるトラウマや重要なヒントが隠されています。この絵を分析する心理学者が、ユキの過去に起きた出来事を推測し始めるきっかけとなります。
・3枚目の絵
風景と抽象的な図形が入り混じる複雑な構図。この絵の中には、前の2枚では曖昧だった要素が具体的に描かれ始め、ユキの潜在的な記憶や感情が視覚化されます。
・4枚目の絵
シーンの一部が重ね描きされ、別の絵と重ね合わせると新たな意味が浮かび上がります。ここで、ユキが意図せず隠していた真実が示唆され、心理学者や読者に衝撃を与えます。
・最後の絵
全ての謎が解けるきっかけとなる決定的な絵。この絵には、ユキの最も深い恐怖や罪の意識が反映されています。物語全体のテーマが集約され、絵が物語のクライマックスに繋がる重要な役割を果たします。
解説とネタバレ
これらの絵は、ユキが過去に経験した事件やトラウマを無意識に描写したもので、彼女の潜在意識が物語の真相を伝えるための「鍵」として機能します。
絵が明かす真実には、ユキの家族関係や事件の被害者と加害者の関係が含まれ、最終的に①~⑤のナンバーの絵を重ね合わせ回転させることで、驚愕の結末に導かれます。
第2章;今野優太が描く絵の内容とその謎とは?
今野優太が描く奇妙な絵が、彼の家族に隠された恐ろしい真実を浮き彫りにします。この章の核心は、彼の祖母である今野直美の過去の犯罪と、それが優太の絵にどのように表現されるかです。
優太は幼少期から絵を描くことが好きで、特に身近なものや人物を題材にしていました。しかし、ある時から彼の絵に現れる要素が異常で、不気味なものになり始めます。その中には、特定のシーンや風景が描かれ、それが後に直美の犯した殺人事件やその隠蔽に関連していることが明らかになります。
具体的には、優太の絵には以下のような要素が含まれています:
奇妙な形をした木や家 – これらは、直美が犯罪を犯した場所を示唆しています。
隠れた人影 – 優太が知らないはずの人物が描かれ、それが直美の被害者と一致します。
赤い線や染み – 血や暴力の象徴であり、祖母が過去に犯した殺人を暗示します。
・絵を通じて明かされる真実
直美は過去に、夫や息子の妻など複数の人々を殺害してきました。その理由は、「家族を守る」という名目のもと、自分の価値観に基づく歪んだ判断でした。しかし、優太の絵は彼女の犯罪の痕跡を無意識的に描き出しています。
直美自身も当初はそれに気づいていなかったものの、絵の内容を分析するうちに、優太が何かを「知っている」可能性に気づきます。
・結末に向けた伏線
第2章では、絵を通じて今野家の家族関係の歪みが浮き彫りになります。特に、優太がどのようにしてこれらの記憶や情報を無意識的に取り込んだのかが読者の興味を引き、直美が絵を恐れる理由が物語の緊張感を高めます。
この章の終盤では、優太の絵が決定的な証拠となり、直美の秘密が露見することを予感させます。物語は優太の無垢な視点と直美の犯罪者としての恐怖が交錯し、家族間の暗い秘密が暴かれるまでの過程がスリリングに描かれています。
第3章:惨殺事件の詳細
山奥で起きた惨殺事件が主題で、物語の恐怖が大きく進展します。この章は、絵に隠された暗号や被害者たちとのつながりが徐々に明かされていく構造で、緻密な伏線が張り巡らされています。
・惨殺事件の詳細とその舞台
事件の現場は山奥の古びた別荘で、ここで家族全員が殺害されるという凄惨な事件が発生します。現場の描写は異様で、血痕が部屋中に広がり、家具が壊され、暴力的な痕跡が生々しく残されています。さらに、被害者の近くには、奇妙な絵が何枚も散らばっていました。
これらの絵は、不気味な雰囲気を醸し出しており、描かれた内容には、絵を見るだけで嫌悪感や恐怖心を抱くようなものが含まれています。この「絵」が物語全体の鍵であり、犯人の心理や犯行動機の暗示として機能しています。
・絵に隠された暗号と犯人像
絵には抽象的な形状や象徴が描かれていますが、それが犯人の心理や事件の状況を示していることが徐々に明らかになります。具体的には、絵の中に:
・被害者の姿を模した抽象画
・山の地形や事件現場を連想させる風景
・歪んだ人体や破壊的なシンボル
などが描かれています。これらの絵は、犯人が事件を計画する際の思考の流れや、過去のトラウマを投影していると考えられます。
犯人は精神的に追い詰められており、家族への愛情や憎悪が混在した感情が犯行に繋がっています。特に「愛する人を守りたい」という歪んだ正義感が暴力を正当化する動機となっています。
・惨殺事件の背後にある動機
犯人は、家族を支配したいという強い欲求を抱いていました。この支配欲の背景には、幼少期に抱えた孤独感や家族への依存が関係しており、それが暴力的な形で表面化します。特に母親との関係が鍵となり、「愛情」を盾にした破壊的な行動が彼女を突き動かしています。
また、犯人は絵を通じて無意識に自身の罪悪感や欲求を表現しているため、絵が事件の全容を解明する鍵となります。事件解決に近づく記者たちは、絵の意味を読み解く過程で犯人の狂気に巻き込まれ、心理的な恐怖が増していきます。
・結末への伏線
第3章の終盤では、犯人の絵を通じて、彼女の内面世界が暴かれます。これにより、彼女が抱えていた苦悩と、家族への愛憎が事件の真相に結びついていきます。さらに、犯人の行動には、過去の出来事に端を発した強い復讐心があったことも暗示されます。
この章は物語全体の大きな転換点となり、残虐な描写や心理的なサスペンスが織り交ぜられている点が特徴です。
最終章:最後の謎解き
1. 絵に隠された構造と意図
最終章では、絵が単なる「不気味な絵画」ではなく、複雑な仕掛けを持つことが判明します。
- 絵の構造
絵には「光と影」を利用した隠し絵が仕掛けられており、特定の条件下で見える部分と見えない部分が存在していました。この隠し絵を解読すると、「犯罪現場を示唆する地図」が浮かび上がるようになっています。 - 絵の作者の意図
作者は、過去に犯した罪の証拠や被害者の存在を暗号として絵に込めていました。それは同時に、絵を見る人に「精神的な影響」を与える仕掛けでもありました。
2. 絵を見ることで起こる現象
絵を見る人が精神的に追い詰められる理由も、最終章で明らかにされます。
- 心理的な暗示
絵には視覚的なトリックが仕込まれており、無意識に「監視されている」「追われている」という感覚を与えます。その結果、絵を見た人々は不安や恐怖を抱き、最終的には錯乱状態に陥ります。 - 「不幸の連鎖」
絵を手にした人々は次々と精神的に病んだり、不審な事故に巻き込まれたりします。この現象は、絵そのものに宿る「負のエネルギー」が原因とされています。
3. 絵と過去の事件の関係
絵が描かれた背景には、ある重大な事件が隠されていました。
- 事件の概要
絵の作者は、過去に連続殺人事件を起こした人物でした。その事件は未解決のままでしたが、作者は罪悪感からか、あるいは歪んだ自己顕示欲から、自身の犯行を絵に描き残していました。 - 主人公が発見した真実
主人公が絵を調査する中で、この事件の詳細が浮かび上がり、絵が「被害者の埋葬場所」を示す暗号であることを突き止めます。
4. 絵の処分とその後
主人公は絵をどうするべきかで葛藤します。
- 絵の焼却
最終的に、主人公は絵を完全に破壊することを選びます。その理由は、絵がもたらす恐怖や負の影響をこれ以上広げないためでした。 - ラストシーンの不穏な余韻
しかし、絵を焼却した後も、絵の一部が奇妙な形で残ります。そして、その焼け残りを手にした別の人物が再び「絵に囚われていく」という描写で物語は幕を閉じます。
エピローグ:新たな不穏な余韻
エピローグでは、物語全体の謎が一応の決着を迎えた後に、新たな不穏な余韻が提示されます。
1. 絵の焼却後の平穏
主人公は絵を焼却し、その負の影響を絶つために最善を尽くします。絵が燃え尽きたことで、事件の謎は解決したかに見えます。主人公とその友人は、再び平穏な日常を取り戻すように見えました。
- 主人公は絵を焼却した後も「何かが終わった」という安堵感を抱けず、どこか不安げな心理状態が続きます。
- 友人は、絵を手放したことで徐々に精神状態が改善していきます。
2. 絵の欠片の存在
焼却したはずの絵の一部が、なぜか完全には燃え尽きずに残ります。その欠片には、絵の中で最も不気味とされていた部分がかろうじて描かれていました。
- その欠片は、絵の「目」を含む部分であり、まるで人を見つめるかのような感覚を与えます。
- 主人公はその欠片を見つけた瞬間、説明のつかない嫌悪感と恐怖を覚えます。
3. 新たな持ち主
絵の欠片は、その場に偶然居合わせた清掃員の手に渡ります。その清掃員は、欠片の不気味さに気づかず、「奇妙だけれど価値がありそう」と考え、持ち帰ります。
- その後、欠片を持ち帰った清掃員の周囲で異変が起こり始める描写が入ります。
- 家で物音がする。
- 視線を感じる。
- 欠片を捨てようとすると不思議な引力を感じ、捨てられない。
4. 主人公の不安
主人公は絵の欠片が完全に消えなかったことに気づき、「本当に終わったのだろうか」と強い疑念を抱きます。
- 彼の中には、「絵の呪い」が依然として存在し、次の犠牲者を生み出すのではないかという恐怖が渦巻きます。
- しかし、どうすることもできない無力感を抱えたまま、エピローグは締めくくられます。
エピローグのテーマと余韻
エピローグでは、解決したと思われた問題が完全には終わっていないこと、そして「呪い」がまだ続いている可能性が示唆されます。この構造は、読者に不安と想像を掻き立てる余韻を残すための巧妙な手法です。
物語は終わりますが、呪いは終わらない。これが『変な絵』のエピローグが伝える恐怖の本質です。読者は、絵の欠片が次の持ち主にどのような影響を及ぼすのか、続きが想像される形で締めくくられます。
作者の雨穴(うけつ)とはどんな人?
雨穴(うけつ)は、現代のホラー小説家であり、YouTubeを中心に活動しているコンテンツクリエイターです。その独特な作風と語り口が人気を集め、ホラー・ミステリー愛好家を中心に注目されています。
自身のYouTubeチャンネルで、作品の元になる短編や物語を語っています。これらは単なるプロモーションではなく、独立したエンターテインメントとして楽しめる内容です。また、動画から小説や漫画へと展開が広がることで、作品の世界観がより深まっています。
ホラーというジャンルを新しい形で切り開いている作家であり語り部です。
『変な家』や『変な絵』などの作品を通じて、日常と非日常の境界線を揺さぶり、不気味な体験を読者や視聴者に提供し続けています。彼の作品に触れると、「恐怖とは何か」「なぜ人は不安を感じるのか」といった深い問いを考えさせられます。
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