◆導入:高時給の“鍵回収バイト”
主人公の ミナト(仮名) は学生。
深夜シフトのバイト帰りに掲示板を見ると、
妙に時給の高い求人を見つける。
仕事内容はこうだ。
-
廃棄予定のマンション住戸を回って鍵を回収
-
住人はすでに退去済み
-
回るのは 3部屋だけ
-
作業は1時間以内で終わる簡単な仕事
-
時給5,000円
「楽勝じゃん。鍵を拾うだけなら危なくないし」
とミナトは気楽に応募。
依頼主は小柄な老人で、
作業前に“注意事項”を書いた紙を渡してくる。
◆◆依頼主の注意事項
紙には、たった3つの奇妙なルール。
-
インターホンは絶対に押さないこと
-
ドアの隙間から中を覗かないこと
-
鍵は“ドアノブから自然に落ちているもの”以外は回収しないこと
ミナトは
「どう考えてもおかしいよな…住人は退去したんじゃ?」
と疑問に思うが、説明を求めようとすると老人が淡々と答える。
「あのマンションには、まだ“残っている方々”がいてね。
ただし会う必要はありません。」
この意味深な言葉が、
物語全体に不気味な影を落とす。
◆舞台となるマンション|不気味な静けさ
ミナトは深夜1時、老朽化したマンションに到着。
壁にはひび割れが走り、
人気がないのに何かの気配だけが “残っている”。
エレベーターは壊れており、
薄暗い非常階段を上ると
どこかの部屋からかすかな生活音 が聞こえる。
しかし住民は退去したはず。
ミナトは気味悪さを感じつつ、
まずひとつ目の部屋へ向かう。
◆◆第一の部屋:空室のはずが“物音だけがする”
101号室。
ノブにはしっかり鍵がかかっており、
ドアの前には依頼主の言うとおりに 鍵が落ちている。
「お、ちゃんと落ちてる。これ回収すればOKだな」
鍵を拾おうとした瞬間――
カタ…ッ
部屋から 家具を動かすような音 がする。
ミナトは思わず
「すみませーん、誰かいますか?」
と声をかけそうになる。
だが、注意事項①
「インターホンは押さないこと」
②
「覗かないこと」
それを思い出し、
鍵だけ回収して足早にその場を離れる。
◆第二の部屋:ドアの下から“誰かの影”
次に向かったのは203号室。
ここでも鍵は、
ドアの下に“そっと置かれている”。
ちょうど拾おうとすると、
部屋の中の電気が一瞬だけチカッと点滅。
その瞬間、
ドア下の隙間に“人の影”がスッと差し込む。
立っている。
しかも、こちらを向いているように見える。
ミナトは息を飲んで固まりそうになるが、
注意事項②の「覗くな」を思い出し、目をそらして作業を続ける。
影は微動だにしない。
鍵をつかむ瞬間、
影がゆっくり動き、
ドアに“こちら側から手を添えるような姿” が映る。
ミナトは恐怖で手が震えながらも、
なんとか鍵を回収してダッシュでその場を離れる。
◆◆最後の部屋:鍵が“落ちていない”という異常
最後に向かうのは305号室。
依頼されたのは3部屋だけ。
これを終えれば帰れるはずだった。
だが、305号室の前には――
鍵が落ちていない。
床にもない。
ドアノブにもない。
ミナトは一瞬、「戻ろうか」と迷うが、
依頼主の条件③が気にかかる。
“自然に落ちている鍵だけを回収”
つまり、鍵が無い = 回収対象ではない。
「じゃあスルーして戻ればいいだけだ」
そう考えて踵を返そうとしたその時…。
◆ドアの内側から「カチャ…」と音が鳴る
静まり返った廊下に、
ドアノブがゆっくり回る音 が響く。
カチャ……
カチャ……
鍵がないはずの部屋で、
ドアノブが、内側から動いている。
つまり――
中に“誰か”がいる。
住人は退去済みのはず。
ならこれは「住人ではない何か」。
ミナトは逃げるべきだと直感するが、
ノブの動きはどんどん早くなり、
ドアが今にも開きそうになる。
◆◆開きかけた隙間から“白い手”が伸びる
ミナトが階段へ走り出した瞬間、
背後で
ギィッ……
とドアが数センチ開く。
隙間から覗くのは、
異様に 長い指を持つ白い手。
その手が廊下へ伸びてくる。
引きずられるような“何かの音”とともに、
とても人間とは思えない動きで床を掴む。
ミナトは振り返らずに全力で逃げ、
階段を滑り落ちそうになりながら出口へ走る。
◆廊下から聞こえる「こっち…来て…」
逃げている最中、
背後から小さな声がする。
「…こっち……来て……」
まるで呼ばれているように聞こえるが、
声に応じてしまえば危険なのは明らか。
ミナトは耳をふさぎ、
マンションの外へ飛び出す。
その瞬間、声もノブの音もすべて止む。
◆依頼主の説明と“3部屋”の意味
翌朝、依頼主に鍵を渡すと、
老人は静かに言う。
「305号室は“まだ”鍵が落ちていなかったでしょう?
あそこは、昨晩……戻ってきたばかり なんですよ。」
ミナトは意味がわからない。
老人はさらに続ける。
「鍵が落ちている部屋は、すでに“空”です。
落ちていない部屋は…まだ空じゃない。」
つまりミナトが回った3つの部屋は――
退去した“住人”が、本当に人間だったかどうかすら不明。
鍵が自然に落ちているというのは、
“中身が消えた”ことを示しているのだと暗示される。
老人は最後にこう告げる。
「鍵が落ちたら、また回ってください。
次はあなたが行く頃でしょう。」
まるで、305号室が近いうちに“また空になる”と予告しているような言い方。
ミナトは震えながら、
二度とこのマンションに近づかないと心に誓い、バイトを終える。
◆第3話まとめ|“音と気配”だけで恐怖を作り上げた神回
第3話は派手な化け物を出さず、
生活音、影、ドアノブの音、手の気配
といった “日常の違和感” を使って怖さを引き出す回でした。
特に読者が震えるポイントは——
-
インターホン禁止の理由
-
ドアの隙間の影が“こちらを向く”恐怖
-
鍵が落ちていない=まだ部屋にいる
-
305号室の“戻ってきた”という老人の言葉
-
手の形状が人間ではない
-
最後まで正体を明示しない怖さ
シンプルながら構成が非常に上手く、
シリーズの中でも人気の高いエピソードです。
吉永
最後まで目が離せない、謎が謎を呼ぶミステリー漫画、ぜひチェックしてみてください!