どうもこんにちは吉永です。今回も『住みにごり』の内容です。前回書いた「森田がやばい5つの理由!親父との関係と目的を考察していく」がかなり好評でして、やはり人気漫画の恩恵は大きいなと実感していました。
「すみにごり」は本来「清濁」と書きますので、「良いところと悪いところが同居している」という意味であり、西田家に万円する”濁り”が日々拡張されている、常に不穏な空気が充満しているようなマンガです。そんな西田家にまつわる不穏さは、やはりキャラクターにあります。
彼ら彼女らの持つ独特な価値観について今回は考察していこうと思います。
- フミヤが森田を前に号泣した理由
- 憲が森田に対する正直な感情
- 百子が不倫相手に謝った理由
目次
末吉の心情考察
まずは『住みにごり』の中でも比較的まともな人物であり、一応は主人公・西田末吉です。
幼馴染の森田からは”きっちゃん”と呼ばれ、やめた会社の同僚からも電話がかかってくるほど、意外とまともなのかもしれません。しかしどこかパッとせず、特徴のないキャラのように見えます。
森田への感情
そして森田純夏に対しては、幼少期には特別な感情はなかったと思いますが、中学高校で彼女がレスリングを始めた頃からはある程度の恋愛感情があったと推測されます。彼女のレスリングの試合に出向き、試合の風景を撮影するふりをして、こっそり森田のたくましい尻を撮影していました。
もちろんその行為は森田にもバレていましたが、気づかないふりをして「レスリング好きだったからな」と言われていましたが、まさかバレているとは気づいてもない。一般的な愚かな思春期男子でした。
東京の大学への進学が決まり、地元で就職した森田とは別々になったものの、帰ってきて早々に行為に走り、プロポーズしようとした日に最悪なフラレ方をすることになりました。その後病院から失踪した森田にも悪い感情はないらしく、なんとなく日々を過ごしている、本当に普通の気の弱い青年です。
「一緒の大学に行こう」と言っていたらしく、これがアプローチだったのか、それとも友達同士の軽い会話だったのかはわかりません。おそらくは前者だと思いますが、森田はそれを分かりつつも微笑んでいたように感じます。
フミヤへの感情
そんな末吉が感情を高ぶらせる相手が、実の兄であり引きこもりのフミヤです。
第一話で、フミヤが通り魔をしている夢を見るほどに何を考えているのかわからない”うんこ製造機”と捉えています。基本的には関わりたくない、とにかくやばいやつだと敬遠しており、姉の長月にも「もっとフミヤと話せ。頭の中で勝手に猛獣にするな」と叱られるシーンがありますが、まあ気持ちはわかる。何も喋らない引きこもり怖いもんね。
森田に手を出したら◯すと豪語しているものの、いざフミヤを目の前にすると怖くて何も言えず。殴られたタイミングでいけないとは思っていたもののついヘラヘラしてしまってます。このヘラヘラ顔は無条件降伏の証拠であり、好きな女のためにしっかりしようと気を張っているつもりでも、結局はシンプル暴力の前に即座に屈してしまうようなタイプです。
実の母・百子からも「そんなにいい男か?」と言われるほど、特別な特徴もなく、諸々弱めな弱者男性です。
フミヤの心情考察
続いて、『住みにごり』の中で最も濁っている存在、毎回新鮮に”濁り”をもたらす存在のフミヤです。
高校卒業後、一度は就職したもののその日に辞めてしまって以来ずっと引きこもっているニート。基本的に言葉を発することはなく、ポテチを愛し、脳卒中の百子からもらった小遣いを貯めて生きている。奇妙なファッションセンスも相まって、家族に対しても得体のしれないキモさを感じさせる存在です。
しかし、意外と普通の心理を持っているような描写もあります。
自身の状況について
長年引きこもり、ニートをしている自分の状況について、意外にも言いしれぬ不安を感じているような描写もあります。
末吉と長月がフミヤの祖父母の家に行った時、冷蔵庫の中には大量のファンタグレープとお菓子、そしてかつて祖父母が座っていた畳にも所狭しとファンタグレープが買い置きされていました。これを見て末吉は祖父母のいた場所に対する冒涜の用に感じていましたが、長月は「あいつも心配なんだと思うよ」とのこと。
フミヤの父・憲はリストラされて退職金も出ず中華屋でバイトをしており、母・百子は脳卒中で動けない。東京で働く末吉と市内で働く長月からの仕送りをメインに暮らしている中で、いつこの生活は立ち行かなくなるかわからない。しかし自分は働くに適していない存在なのだということを理解してしまっている状態だと思うんですよね。
いわゆるコミュ障なので、人と接することもできない。また、幼稚な精神性から物事を続けることも我慢することもできない。社会から阻害された気になって自分の部屋にこもっている。でもこの生活もいつまでも続かない。そんな葛藤から、とりあえず食料の備蓄から始めたのだろうと考察してます。
社会に出ないと生きていけないけど、社会に出ることができない。
なのに実際自分の部屋に南京錠をかけていることからも、自分が唯一生きていける場所を守りたいという生存本能も垣間見えます。色々矛盾してますよね笑
森田への感情
そして森田純夏に好意を持っていました。末吉同様に、幼少期には特別な感情はなかったと思いますが、本屋で話しかけてくれたあの時、おそらく好意が芽生えてしまったと考えられます。異性に対して免疫が全く無いので、少し話しかけられただけで好きになっちゃう童貞ボーイなのです。
フミヤは基本何も話さないので、人間らしい感情を持っているかどうか不明でしたが、森田への恋愛感情を見る限り「感情はある」ようです。
西田家は昔から、不純異性交遊に厳しかったとのことで、テレビでも性的な話題が出るとチャンネルを変えたり、マンガでもえっちなシーンは見てはいけないとの教えがあったようです。フミヤはその教えに従い、マンガにエロシーンがあればそのページを破り捨てているように見せかけて、実はコレクションしています。
それを見てシコるという、一般的な思春期男子の行動をトレースしています。その後森田にラブレターを書いたり、バイト中の名札をパクってそれを見てシコったり、割と普通(?)な感情はあります。だからこそ森田に好意を持ち、フミヤなりにアプローチをした結果、弟に取られてしまいましたけどね。
自分を選ばなかった女に八つ当たりで憤りを感じ、森田の名札に鎌を突き刺して田んぼに投げ捨てるという奇行に走りました。そういうとこやで・・・
森田に号泣
そこまで愛した女に振られた森田に対し、一時は憤慨していたものの、ひょんなことから森田の方から行為を持ちかけてきました。夢にまで見た生身の森田が、フミヤの前で下着姿になって自分を誘っている。フミヤも森田に馬乗りになり、マンガで腐る程見てきた女性の胸が目の前にある。
そして森田の胸に手を伸ばすものの、結局のところは何もせず、フミヤは号泣したんです。好きな子とヤれるのに泣く、この時の心情について、色んな感情が爆発したのかと思ってます。
まずは森田に対する強い恋愛感情、そしてそれが報われなかった無力感、末吉に対する怒り。それを無理に押し殺そうとしていく中で、心のどこかでこんな自分なんかが選ばれるわけがないことがわかっていたという絶望感。しかしひょんな形で森田とヤれそうになった時、これまで何度も自分の想像の中で汚してきた罪悪感もあったかと思います。
とはいえ性欲の強いフミヤは森田の胸に手を伸ばしますが、何しろ童貞なので女子の前でかっこつけたいお年頃(精神年齢)なので、ヤれそうでも無理にヤラない俺かっけえを演じていたのだと思います。その結果、手に入りそうだったのに自らの手で拒絶したことを感じ、あらゆる矛盾が一気に爆発して号泣したのかな〜と思ってます。
その結果森田の方からも拒絶され、今後関わらないようにしますねと言われてしまいました。たとえあの時ヤッてたとしても結果は変わらなかったとおもいますけどね。
西田憲(親父)の心情考察
クソ親父として名を馳せた西田憲について、いわゆる”クズ”を想像していただければ憲については簡単に理解できます。
自己中心的で金に汚く、他人の感情よりも自身の欲望に忠実であり、バレなければ何をしてもいいと潜在的に考えているクズです。ですが若い頃には他人のことを考えられる人間性もありました。加齢とともに消え失せてしまったようです。
ワシは総務部長ぞ
『住みにごり』第一話の時点で、憲は長年勤めていた高級鏡台の企業を定年間際にクビになっており、おそらくは懲戒免職のため退職金ももらえずに退社することになってしまいました。その事実を百子以外には告げず、末吉と長月にも伝えていなかったのです。
会社勤めの頃、高級鏡台をいくつも売っていたらしく、その実績を元に「総務部長」にまで上り詰めていたらしく、クビになったあとにも事あるごとに「ワシは総務部長ぞ」と口にするあたり、かなり見栄っ張りな部分が垣間見えます。そして自身がクビになったことを家族にも告げていないあたりからも、カッコ悪い自分を見せたくないのでしょう。
ただ、これに関しては末吉も感じていたように、ある意味かっこいい部分でもあります。自分の息子くらいの年齢の先輩にこづかれながらも皿洗いをして家計を守っている姿は良い親父像なのかもしれません。しかし酒を飲んで息子を殴ったり、物に当たったり、負の側面が強すぎて良い面も打ち消されてしまってますね。
家族について
そして家族観としてはかなり濁りまくってます。
百子一筋を信条に、確かに百子のことは大好きだったようです。しかしその反面、若い子と不倫はするわ、息子に暴力を振るうわ、挙句の果てに百子が末吉を妊娠した際には「もう二人いるからええやろ」と堕胎を提案したり。この発言の際に葛藤がなく、曇りきった眼であったことが個人的には信じられません。
長月も「あんたの子供に生まれてこなけりゃよかった」と何度も言っているように、そのように思われるべき人間性だと思います。
森田との関係
ここに関してはもはや言うまでもなく、完全に濁りきっています。憲と森田の濁りがなければ物語も何もなかったでしょう。
既に他の記事でガッツリまとめているので、西田憲と森田純夏の関係についてはこちらの記事をご覧ください。
>>>森田がやばい5つの理由!親父との関係と目的を考察していく
百子の心情考察
さて、ここまで濁りきった西田家の中心にいる母・百子について、脳出血で車椅子生活を余儀なくされている彼女ですが、実は濁りの全てを理解しています。というか不穏な気配を感じ取り、フミヤをスパイとして送り込んでいました。
憲の浮気を知ったタイミング
良妻賢母的側面の強い百子ですが、とあるタイミングで憲の浮気を知ってしまいます。この時、身を尽くして家族に尽くしてきたこれまでの人生を裏切られたように感じたものの、自身の身体が不自由になっていることもあり、憲を切ることができなかったのです。自身のために生きさせる相手が必要であり、それは紛れもない憲だったのです。
ということで殺意が湧き上がっているにも関わらず、表向きは殺意を隠しつつ、憲の浮気相手を探し出すようにフミヤを使うことにしました。
自分の世話をさせる相手はフミヤでも良かったはずですが、それは無理なんですよね。
フミヤについて
長男であるフミヤは既に引きこもり始めて10年以上が経過したれっきとしたニートであり、収入は0。憲からも「うんこ製造機」と呼ばれ、何も喋らず不穏な存在。百子が下半身不随になった時、憲を切らなかったのは「自身の世話をさせる相手」が必要だったから。
しかしフミヤはその役目を果たすことができないと考えたんでしょうね。社会不適合者であり、1円も収入もなく、今後社会に出てお金を稼ぐスキルがまったくないことを理解していたんです。だからこそ憲を切ることができず、フミヤを浮気相手を探すために買収したわけです。
40手前にもなって障害を持つ母にせびり、小遣いをくれない時には百子の車椅子を窓ガラスに投げつけるなど、幼稚過ぎる精神性を持ち、時折見せる凶暴性、こんな奴に頼らなければいけない絶望も半端ないことでしょう。
森田について
そして憲の不倫相手だった森田純夏について、心の底からの憎しみが湧き上がっていたことでしょう。
そのため、不倫が発覚したタイミングで「森田に最も大きなダメージを与えてやろう」と思い、百子のとった行動は・・・
森田に謝ることでした。
関係が始まった18歳から10年間、森田の人生は西田憲に狂わされて”無駄”になってしまったことを謝りました。これにより、森田は自身の10年間、そして憲への恋心、言うなれば人生で最も大きな感情そのものが無駄だったことを確定させました。これにより森田、そして憲も激昂して泥沼展開になりました。
後にこの謝罪は意図的にダメージを与えるためにやったと話していることもあり、かなり怖い女性だと思います。百子は基本的に笑顔で大人しいので、逆にこれは恐ろしく感じますね・・・
森田の心情考察
最後に、以前の記事で嫌と言うほど心情考察をした森田について。前回やってますので、森田の心情考察については以下の記事をご覧ください。かなり徹底的にやってますので、以下の記事だけ見ればすべてが分かります。
>>>森田がやばい5つの理由!親父との関係と目的を考察していく
まとめ
このように『住みにごり』の登場する人物の中には、心情考察が必要な人物たちがいます。
特に西田百子と森田純夏、フミヤ等は表面的な言動だけではなく、その背後にある部分まで考えていかないとすべてを理解できません。それに正解はなく、ネット上に参考となるサイトもなかったので、一読者として感じた部分をそのまま書き続けてきました。
間違っている部分や完全ではない部分もあるとは思いますが、現状の心情考察の結果でした。長い文章を御覧いただきありがとうございました。今後も『住みにごり』については記事を作成していきますので、長らくお付き合いください!